空想職業まとめ#2

空想職業まとめ#02

11.影使いと奏者
 氷月は『影使い』です。髪は蒼色。瞳は薄紅色。真面目な性格で、お札を使用します。仲がいいのは『奏者』、悪いのは『奪い屋』。追加要素は『色白』です。

 呪符を握る指の白さに、竪琴でも爪弾けばさぞや絵になるだろう、俺の代わりにどうだと問えば怯えた目で少年がこちらを見た。影を使うから光を厭うのか、あるいは逆か。
「あの人みたいに言わないで」
 奪い屋は苦手だと影使いは言う。だってあの人は眩しすぎて、僕から隠れる影を奪ってしまうから、と。

12.音集め屋と守り人
 氷月は『音集め屋』です。髪はせぴあ色。瞳は褐色。図太い性格で、お札を使用します。仲がいいのは『守り人』、悪いのは『言霊師』。追加要素は『天涯孤独』です。

「なにが『符に音を封じるなど邪道』、だ」
 あの言霊師になんと言われようとも関係ない。地に満ちる森羅万象の発する声に耳を傾け、形を与え留めることが男の使命であり、生業であったから。
 儀式の最中には無防備になるその背を預けた守人は、男のこぼした愚痴にただ微かに微笑んだようだった

13.銀細工師と裏占い師
 氷月は『銀細工師』です。髪は夕焼け色。瞳は蒼色。天邪鬼な性格で、糸を使用します。仲がいいのは『裏占い師』、悪いのは『風読み』。追加要素は『頭領』です。

 その鳥は翼を広げ、風を待っているようだった。
 無論、銀糸を編んだ鳥が勝手に飛びはしない。実用性とはかけ離れた代物ばかり造る天の邪鬼の身代が傾かずにいるのは、頭領という肩書きにも依るのだろう。
「これがどこまで飛ぶかで占うか」
「ひでぇ占い師様だな」
 なに、裏の占術など始めからろくでもない。

14.飴屋と踊り子
 氷月は『飴屋』です。髪は浅葱色。瞳は勿忘草色。照れ屋な性格で、杖を使用します。仲がいいのは『踊り子』、悪いのは『絵師』。追加要素は『美声』です。

 「何か怒ってるみたいだけど」
 絵具で汚れた銅貨を見て、傍らの踊り子が艶やかに笑う。絵師の不機嫌そうな顔を思いだし、飴屋の口から溜め息がひとつ。
「心当たりがないんだけどな」
 彼に言葉を掛けるのだって、本当はなけなしの勇気を振り絞っての事なのに。
 「その飴、言葉までは甘くならないようね」

15.封魔師と飴屋
 氷月は『封魔師』です。髪は桜色。瞳は浅葱色。図太い性格で、針を使用します。仲がいいのは『戦巫女』、悪いのは『飴屋』。追加要素は『美声』です。

「一袋よこしなさいよ」
 睨み付けながら言ってやると、飴屋はどこか悲しげな顔で見つめてきた。その表情が余計に腹立たしくて、飴の袋を引ったくるように受け取って銅貨を押し付けた。
 戦巫女様がこんな男を気に掛けているのはきっと、こいつの声が美しいからだ。
 だから、大嫌いな飴屋の飴を今日も買う。

16.染め物屋と輝石掘り
 氷月は『染め物屋』です。髪は蜂蜜色。瞳は藍色。控えめな性格で、傘を使用します。仲がいいのは『輝石掘り』、悪いのは『読心師』。追加要素は『背が低い』です。

「いつもありがとうな」
 仕上がったばかりの着物を差し出すと、輝石掘りは嬉しそうに笑ったようだった。傘を差していると背の高い彼の顔は見えないけれど、直視するのは恥ずかしいからきっとこれでいい。
 こんなときに限って、あの読心師が通りかかるのだ。こころの裡を、誰にも知られたくはないのに。

17.恋愛調香師と骨董屋
 氷月は『恋愛調香師』です。髪は紫紺。瞳は碧色。寂しがりな性格で、筆を使用します。仲がいいのは『骨董屋』、悪いのは『裏占い師』。追加要素は『不幸体質』です。

 ひとつまみの香を炎に投じる。ゆらめいて炎が色を変え、ふわりと芳しい薫りが立ち上る。脳裏に過るのは裏占い師の姿だった。
 骨董屋が煙草の煙をくゆらせ笑う。
「お前も、難儀な性格だよなァ」
「うるさいよ」
 他人の色恋沙汰には最適な解を導けても、いつだって取った筆は最後まで言の葉を紡げやしない。

18.影縫いと遊覧気球屋
 氷月は『影縫い』です。髪は紺碧。瞳は蒼色。甘えたがりな性格で、呪符を使用します。仲がいいのは『遊覧気球屋』、悪いのは『人形使い』。追加要素は『頭領』です。

「君みたいな奴は好きだよ」と呟けば、酔ったのかと遊覧気球屋が問うた。
 己の翼を持つ者は、端から束縛など叶わぬと判っているから好きだ。いくら傍らに影を縫い止めようともついぞ己のものにはならなかった人形使いの顔を思い出し、煽る酒が喉を灼く。
 頭領などという肩書きに、なんの意味があろう?

19.仮面屋と郵便配達人
 氷月は『仮面屋』です。髪は深緑。瞳は瑠璃色。冷静な性格で、雨を使用します。仲がいいのは『聞き耳屋』、悪いのは『郵便配達人』。追加要素は『和服』です。

 霧のように音もなく、静かな雨も馴染みの郵便配達人を濡らすには十分なようだった。
 貴女はいつも雨の匂いがしますね、と呟く男に曖昧な笑みを返す。
 私が光を知らぬが故に、雨を通して外界を視ていることを彼は知らない。もしあなたの顔を見ることができたなら、この白い仮面にも色を与えられるのに。

20..歌うたいと守り人
 氷月は『歌うたい』です。髪は灰鼠色。瞳は蜂蜜色。やんちゃな性格で、かんざしを使用します。仲がいいのは『守り人』、悪いのは『竜騎士』。追加要素は『不幸体質』です。

「また彼のこと?」
 探るような守人の視線に、思わず顔を背けた。
 苛立ち混じりに伸ばした指が簪に触れる。独り立ちの祝いにとこれを寄越した男は愛騎と共に雲海に消え、最期の便りだけが残された。
 あんな奴は大嫌いだ。あらゆることを教えてくれたのに、自分の忘れかただけは教えてくれなかった酷い男は。