空想職業まとめ#1

空想職業まとめ#01

1.魔法屋と言霊師
 氷月は『魔法屋』です。髪は琥珀色。瞳は灰鼠色。うっかり屋な性格で、扇子を使用します。仲がいいのは『言霊師』、悪いのは『札書き』。追加要素は『和服』です。

 「無駄が多い」と、店の奥に上がり込み、我が物顔で寛いでいた男は欠伸混じりに言った。書き損じの束と格闘しながら、魔法屋は「そりゃあね」と応える。
「皆が旦那みたいなら、ぼくの商売はあがったりですよ」
 でも、世の大半の人間は言霊を自在に操る才など持ち得ないのだ。

2.水晶調律師と蜂蜜屋
 氷月は『水晶調律師』です。髪は蜂蜜色。瞳は浅葱色。おっとりした性格で、針を使用します。仲がいいのは『蜂蜜屋』、悪いのは『輝石掘り』。追加要素は『尻尾』です。

  長い銀の針が触れると、りぃんと澄んだ音が響いた。慎重に耳を傾け、それを幾度も繰り返す。
 輝石掘りは、この「まだるっこしい」手順を踏まねば自慢の水晶が商品と認められぬのが不満らしい。「あいつに余裕がないのは」甘い香りを漂わせ、蜂蜜屋が言う。
「きっと甘い物を食べないからだぜ」

3.影縫い
 氷月は『影縫い』です。髪は葡萄色。瞳は藍色。真面目な性格で、紙風船を使用します。仲がいいのは『飴屋』、悪いのは『骨董屋』。追加要素は『色白』です。

 己の得手は影縫いであって仕立屋ではないのだが、と男は嘆息した。しかし、かの踊り子にとっては同列なのか、にこやかに鋏と反物を押し付けられたのは先刻のこと。
 これがあの骨董屋ならば無言で突き返すところなれど、どうにも相手が悪い。飴屋には言わずにおこう、と思った。酒の肴にされるのは御免だ。

4.郵便配達人と草原航海士
 氷月は『郵便配達人』です。髪は深緑。瞳は朱金。甘えたがりな性格で、はさみを使用します。仲がいいのは『草原航海士』、悪いのは『水晶調律師』。追加要素は『獣化』です。

「あいつ、もうちょっと付き合いが良くてもいいと思うんだよ」
 陸船のへりに持たれながら、憤慨した様子で郵便配達人は捲し立てた。水晶の調律は根気のいる作業なのだから、仕事中に構えと言うのが無茶な話だ。
 それは敢えて指摘せず、舵を取る航海士は甘えたがりの友人に「はいはい」と相槌を返した。

5.風読み
 氷月は『風読み』です。髪は勿忘草色。瞳は朱金。慎重な性格で、雨を使用します。仲がいいのは『封魔師』、悪いのは『音集め屋』。追加要素は『翼』です。

 空は明るいままに、静かに雨が降っている。湿り気を帯びた風を翼に受けて、風読みは携えた巻物に筆を走らせた。
「雨が降れば、地に満ちる音が狂う」といつも知人は顔をしかめる。申し訳ないとは思うものの、自分も生業ゆえに譲れない。あの封魔師に話せば、「気にすることないのに」と笑うのだろうが。

6.放浪料理人と蜂蜜屋
 氷月は『放浪料理人』です。髪は蜂蜜色。瞳は漆黒。うっかり屋な性格で、扇子を使用します。仲がいいのは『蜂蜜屋』、悪いのは『癒し手』。追加要素は『美声』です。

「また喧嘩かよ」呆れた顔の蜂蜜屋に、厨房の娘は頬を膨らませた。「喧嘩じゃない、向こうが一方的に怒ってる」
 甘い物が苦手な癒し手に、蜂蜜を使った菓子ばかり渡せば怒りもするだろう。だが、娘は悪びれもせず「おいしいのに食べない方が悪いの」と宣った。その声がやけに美しいのは、蜂蜜のお陰か。

7.記録士と蜂蜜屋
 氷月は『記録士』です。髪は灰鼠色。瞳は葡萄色。意地っ張りな性格で、はさみを使用します。仲がいいのは『蜂蜜屋』、悪いのは『染め物屋』。追加要素は『邪眼』です。

「素直に染め物屋に頼めば」「絶対に嫌だ」
 染みになった反物を持ち、鋏で表面を削ぎ落とそうと躍起な記録士は、蜂蜜屋の言葉に余計意固地になった。
 駄目にしては元も子もないだろうに。
 記録士の敵愾心の理由は、邪眼隠しの眼鏡の分厚さをからかわれているからか。奴が音を上げるまで、一眠りでもしよう。

8.水晶調律師と放浪料理人
 氷月は『水晶調律師』です。髪は紅茶色。瞳は浅葱色。おとなしい性格で、呪符を使用します。仲がいいのは『放浪料理人』、悪いのは『絵師』。追加要素は『長髪』です。

「水晶の見た目だけを重視する人は好きじゃない」
 何気ない呟きに、廚に立つ娘は「よく判る」と首肯した。
 身一つで過酷な巡礼の旅路を辿る彼女の強さに憧れはすれど、どこかへ旅立つという選択肢は初めからありはしない。
 良質な星の降り注ぐこの海辺を彼は愛していて、そんな彼を私は愛しているのだから

9.封魔師と地図屋
 氷月は『封魔師』です。髪は紫紺。瞳は灰鼠色。図太い性格で、本を使用します。仲がいいのは『地図屋』、悪いのは『妖書屋』。追加要素は『背が高い』です。

「彼はなぜその本に拘るの」
 問えば男は唇を吊り上げて笑った。その手が撫ぜる革張りの古書は、古今東西の魔を封じた男の一族に伝わる秘伝の書という。そのような稀覯本は専門家が丁重に保管すべきと妖書屋は常々主張していた。
「ご大層なこと言って、奴は自分がこの本を手に入れたいだけさ。地図屋の」 

10.幻獣使いと狩人
 氷月は『幻獣使い』です。髪は浅葱色。瞳は勿忘草色。臆病な性格で、風を使用します。仲がいいのは『絵師』、悪いのは『狩人』。追加要素は『病弱』です。

 風に乗って、切れ切れのか細い声がきこえる。声のした方を見やれば、青白い頬の娘がこちらを睨んでいた。
 ふらつく足元を幻獣に支えられた娘には、こんな荒野ではなく絵師の工房の方が相応しい。
「お嬢ちゃん。まずは俺の話を聞いてくれ」
 俺の獲物は普通の獣さ、あんたの友達を狩ったりなんざするもんか。