その他のネタ
お題:「のこったものはひとつ」
《正規軍の猛将》
不毛な戦いだった。死にかけた国の体面を守るために多くの新兵が死んだ。頭上には気の早い烏。
「結局、俺にはこれしか残らないようだ。いや、最初からこれしかなかった、が正解か」
血と汗の染み付いた剣の柄を握り締める。
「あんたはどうなんだい?」
紫煙をくゆらす優男に、その切っ先を向けて笑った。
《反乱軍の首魁》
家族、友人、恋人、色んなものが自分を通りすぎていった。悪かったのは己の行いや、巡り合わせと様々だったが。
「残ったの、もうコレぐらいだよなぁ」
手にした煙草に火を点ける。今日も多くの同胞を失った。
皆の前ではそしらぬ顔でも、独りになれば恐怖が忍び寄る。
視線の先、正規軍の猛将が笑っていた。
上:自分解釈
「敵味方どっちもボロボロになった戦場で『やっぱり俺にはこれしかなかったんだ。最初から……』みたいな感じで武器握ってるおっさん」
下:友人解釈
「どうしようもない理由で大事なものをどんどん無くしていって、周りには平気なふりしてるけど、もう縋れるものはこれくらいだなぁ、と一人で煙草でも吸ってるイケメン」
お題:「手だけつないで」
君が凍えた様子なので差し出した僕のマフラーを拒んで、素直じゃない君は「いらない」とそっぽを向いた。
「……でも、手だけつないで」
赤く染まった頬が愛しくて、僕は笑いながらかじかんだ君の小さな手を取る。
可哀想に、とても冷えてしまっている。
今日は早く帰って、あたたかいスープを二人で飲もう。
お題:「パスワードは二万通り」
「パスワードは二万通り」
電話越しに真面目な声が言う。
「何それ、適当に入れていけば当たるんじゃ?」
「君の好きなところを二万通りだから、適当に入れても無駄」
「えっ……」
おいそれはどういう意味だ。
「信じたの?嘘なのに」
「なんだよ人で遊ぶな」
「いや、嘘。……さて、どっちが本当だと思う?」
お題:「新着メール1件」
携帯の画面通知は『新着メール1件』。
無題のメール、本文にはただ『死ぬほど暇』。
こんな夜中に駆けつけて来いとでも言うのか。
無視していればきっと、『つまんないから死んじゃう』とでも次のメールが来るんだろう。
コートを引っかけてドアに向かう自分は大馬鹿だ。ちくしょう、惚れた弱みだなんて。
お題:「深夜の廊下」「思い出す」「メール」
午前零時、人気のないマンションの廊下を歩きながらいつかの夜を思い出した。
今と同じ時刻、君からのメール。
ふざけた調子で「今すぐ会いたい」と、あの時どうしていれば今も君と一緒にいられただろうか?
臆病すぎてその先に踏み込めなかった僕の、ほろ苦い後悔は今も胸の奥にそっと息づいている。